婚姻届を出す際やパスポートの申請を行う際に、必要となる書面が戸籍謄本・戸籍抄本です。
日常生活を過ごす上で頻繁に利用する事はないので、あまり馴染みがないという方もいるのではないでしょうか。
どんなことが書かれているのか、記載されている内容を知らないという方もいると思います。
しかし、人生で何度かは戸籍謄本・戸籍抄本を取り寄せる機会があるはず。
その時に困らないようにするためにも、戸籍謄本と戸籍抄本について詳しく知っておきましょう。
ここでは戸籍謄本と戸籍抄本の違いや記載されている内容、また取り寄せ方について解説していきます。
戸籍謄本と戸籍抄本の違いと必要な時
まず前提として知っておきたいのは、私たちが役所で請求できる戸籍は戸籍原本の写しだということです。
原本は本籍地の役所で管理されているので、たとえ本人であってもこれを入手することはできません。
戸籍謄本と戸籍抄本は、その原本をコピーした書面になります。
- 戸籍謄本
原本の内容全てつまり戸籍に記録されている全員分の事項が記載されている書面 - 戸籍抄本
原本の一部つまり戸籍に記録されている一個人の事項のみが記載されている書面
戸籍謄本と戸籍抄本の違いは、戸籍全員の事項が記載されているか、一個人のみの記載かという点です。
戸籍謄本の正式名は戸籍全員の事項が記載されているので「戸籍全部事項証明書」、また戸籍抄本は一個人の事項のみが記載されているので「個人事項証明書」です。
戸籍謄本や戸籍抄本は戸籍が電子データ化される前の呼び名ですが、戸籍全部事項証明書・個人事項証明書と言わなくても今でも通用します
家族全員分の戸籍が欲しい場合には戸籍謄本を、家族の中の一個人の戸籍が欲しい場合には戸籍抄本を請求します。
どんな時に戸籍謄本や戸籍抄本が必要なのかというと、その例を挙げるとこのようになります。
- 相続の手続き
(銀行預金・生命保険・不動産登記・お葬式など) - 所有権の名義変更
(自動車・土地・家など) - その他(離婚・名前の変更・性別変更など)
戸籍関係の書類は相続で必ず必要ですが、それ以外にも戸籍謄本が必要になる場面は意外と多いです。
上記以外にも養子縁組や国家資格の登録などでも必要です。
戸籍謄本に記載されている内容
画像は夫婦の戸籍謄本の見本です。
戸籍は夫婦と子供の2世代まで記載され、①筆頭者(父もしくは母)②配偶者(父もしくは母)③子供の順で記載されます。
戸籍謄本には1~4までの内容が記載されており、二人目以降(配偶者や子供)は5の内容(3と4)が記載されます。
戸籍謄本に記載されている具体的な事項は以下の通りです。
1.本籍と氏名
本籍 氏名 |
●県●市●町 ●● ●●● |
本籍とは、戸籍がある住所のことで、本籍地を意味します。
現住所とは全く関係がなく国内であればどこでも置くことができます。
そのため必ずしも住民登録地と同じとは限らず1か所の土地に複数人の本籍が置かれることもあります。本籍は都道府県名、市区町村名、町(丁)字名、地番で表示されます。
戸籍謄本に記載されている氏名の事項は、筆頭者の氏名です。
筆頭者とは戸籍の最初に記載されている人のことです。
結婚した場合、夫婦で名乗る苗字を選択した方が戸籍の筆頭者となります
婚姻届を提出する際に夫の氏を選んで婚姻すれば夫が筆頭者に、妻の氏を選んで婚姻すれば妻が筆頭者です。
たとえ筆頭者が亡くなったとしても、戸籍の筆頭者が変わることはありません。
2.戸籍事項
戸籍事項 戸籍編成 |
【改製日】令和1年1月1日 【改製事由】 |
戸籍事項には、戸籍の改製や編成などにかかわる内容が書かれています。
戸籍が作成された日付と、どんな理由なのかという内容が記載されています。
例えばAさんとBさんが令和2年2月2日に婚姻届を提出したとすると、戸籍事項には戸籍編成【編成日】令和2年2月2日と記載されます。
また同様に転籍を行った場合にも転籍【転籍日】令和2年2月2日及び【従前本籍(前の本籍地)】が記載されます。
改製と編製の違いとは、編製とは新しく戸籍が作られることで、改製とはこちらの事情ではなく、法改正やシステムの変更に伴い作られたものです。
3.戸籍に記載されている者
戸籍に記載されている者 |
【名】●● ●●● 【生年月日】●年●月●日 【配偶者区分】 【父】●● ●●● 【母】●● ●●● 【続柄】 |
3の「戸籍に記載されている者」と4の「身分事項」で一人分の記載事項です。
戸籍に記載されている者は、夫や妻そして子供の身分事項を確認することができる事項です。
戸籍に記載されている者の内容は、その戸籍に在籍している人の名前や生年月日など基本情報が記載されています。
結婚していれば配偶区分に夫・妻などの記載があり、戸籍上の父母の名前、父母から見た関係(続柄・長男など)が記載されています。
4.身分事項
身分事項 出生
婚姻 |
【出生日】●年●月●日 【出生地】●県●市●町 【届出日】●年●月●日 【届出人】父(母) 【送付を受けた日】●年●月●日 【受理者】●県●市長 |
【婚姻日】●年●月●日 【配偶者氏名】 【従前戸籍】●県●市●町 ●● ●● |
身分事項とは戸籍上の身分関係のことで、個人の記録が記載されています。
どこで生まれたのか、誰の子供なのか、いつ結婚したのか、などの記録が書かれています。
出生届や婚姻届など何らかの戸籍の届出があり、戸籍の内容に変更があるとその都度記載されます。
出生や婚姻以外には、養子縁組・認知・名前の変更・性別の変更などの届出があり、身分事項にそれらの内容が記載されます。
婚姻にある従前戸籍は、結婚前の戸籍の場所が記載されています。
戸籍謄本には記載されない事項もある
戸籍謄本や戸籍抄本には上記の内容が記載されますが、例外として戸籍の変動によって新しく作られた戸籍には記載されない事項もあります。
よく知られているのは離婚の履歴です。
転籍すると本籍地が変更されるため、新しい本籍地で作成された戸籍には離婚に関する事項の記載がありません。
離婚の履歴が残るのは前の古い戸籍だけです。
離婚以外にも名前の変更なども記載されない事項ですが、完全に移記されないだけで、一部の記録(名の変更日)は新しい戸籍にも記載されます。
戸籍謄本・戸籍抄本の受け取り方
戸籍謄本や戸籍抄本は、婚姻届の提出やパスポートの申請などで必要です。
必要になった際にスムーズに受け取れるよう、戸籍謄本や戸籍抄本を受け取る方法について解説します。
戸籍謄本や戸籍抄本の受け取り方は、以下の4つの方法があります。
戸籍謄本が必要な時の例を挙げるとこのようになります。
- 自分で本籍地の役所に取りに行く
- 代理人が本籍地の役所に取りに行く
- 郵便で本籍地の役所から取り寄せる
- コンビニでプリントアウトする
戸籍謄本や戸籍抄本など戸籍の書類は、本籍地と筆頭者がわからないと請求できないので、あらかじめ把握しておきましょう。
自分で本籍地の役所に取りに行く
自分で本籍地の役所に足を運び、窓口から戸籍謄本や戸籍抄本を申請する方法です。
請求先は住民票に登録してある現在住んでいる住所ではなく、本籍地の役所なので注意してください。
実は私はそのことをすっかり忘れていて、現住所の役所へ行ってしまい、戸籍謄本が受け取れなかったことがあります・・(笑)
窓口で申請する際に、申請書は備え付けですが、印鑑(認印で可)と本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなど)が必要になるので忘れずに準備しましょう。
受け取りの際には、各市町村が定めている手数料も必要です。
大体どの自治体でも戸籍謄本・戸籍抄本の手数料は450円です。
代理人が本籍地の役所に取りに行く
戸籍謄本や戸籍抄本を請求できるのは本人だけでなく、代理人も可能です。
代理人は家族以外でも、本人からの委任状があれば誰でもなることができます。
申請には、印鑑(認印で可)・委任状・代理人の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなど)が必要になります。
代理人が本人と同じ戸籍に属している場合、委任状は必要ありません。
親族が代理人でも、父母の兄弟姉妹・甥・姪は委任状が必要です。
郵便で本籍地の役所から取り寄せる
戸籍謄本や戸籍抄本は役所に行かなくても、郵便で本籍地の役所から取り寄せることもできます。
郵送で取り寄せる場合は、本籍地の役所のホームページから請求書(申請書)をダウンロードします。
そして、本人確認書類のコピー(代理人の場合は代理人の本人確認書類)・各市町村で定められた手数料・返信用封筒・代理人が請求する場合は委任状を用意します。
これらが用意できたら本籍地の役所に郵送しましょう。
コンビニでプリントアウトする
最近はコンビニで戸籍の書類を取ることができるようになりました。
マイナンバーカード、または住民基本台帳カードを持っていれば、コンビニに設置されているマルチコピー機からカードを読み取り、戸籍謄本・戸籍抄本をプリントアウトすることができます。
ただし、コンビニでの戸籍謄本や戸籍抄本の発行は、すべての自治体が対応しているわけではありません。
あなたの本籍地の自治体が対応しているのかは地方公共団体情報システム機構で確認することができます。
また住民票に登録してある現在の住所と本籍地が異なる場合には、事前に利用登録申請を行う必要があります。
この利用登録申請もコンビニのマルチコピー機から行うことができるのですが、申請が通るのに数日かかることもあるので余裕を持って行うようにしましょう。
コンビニでプリントアウトする際にも、他の受け取り方同様に各自治体が定める手数料が必要です。
戸籍謄本・戸籍抄本に有効期限はある?
戸籍謄本や戸籍抄本の取り方はいくつかありますが、発行後の有効期限も気になるところ。
戸籍謄本や戸籍抄本そのものには有効期限はありません。
しかし、提出先によって有効期限が決められていることがほとんどです。
金融機関だと有効期限は3ヵ月が一般的で、パスポートは6ヵ月以内となっています。
婚姻届けの際に提出する戸籍謄本は有効期限が決められていないこともあります。
ただし、役所によっては3ヶ月以内のものなど独自で定めている場合があるので、その際は役所に確認しましょう。
有効期限が定められていない場合でもあまりに発行日が古かったり記載内容が現在と異なっている場合には利用できない可能性があるので、その際は新しく発行することをおすすめします。
物事をスムーズに進めるためにもできるだけ直近で発行した戸籍謄本・戸籍抄本を利用するようにしましょう。
戸籍謄本と戸籍抄本の違いや記載内容のまとめ
戸籍謄本と戸籍抄本の違いは、全員分か個人分かの違いだけです。
本籍・氏名・身分事項など、記載される内容に違いはなく同じです。
戸籍謄本や戸籍抄本の請求先は本籍地の役所なので、そこは間違えないようにしてくださいね。