戸籍と住民票

戸籍謄本や住民票の悪用事例とは?役立つ制度や手続きも解説

戸籍や住民票の悪用事例と制度

戸籍謄本や住民票は委任状があれば家族以外の他人でも取得できますが、他人が不正取得することで悪用された事例もあります。

場合によっては、他人ではなく親族が戸籍謄本や住民票を悪用するなんてこともあるかもしれません。

誰もが常に第三者に戸籍謄本や住民票を悪用されるリスクがあります。

戸籍謄本や住民票を悪用されると、クレジットカードを偽造されたり個人情報が売買されたりなど、さまざまな危険が生じます。

第三者から戸籍謄本や住民票を悪用された時の対策として、各自治体が導入している「本人通知制度」を利用することがおすすめです。

ここでは、戸籍謄本や戸籍抄本などの戸籍に関する書類や住民票が悪用された事例を紹介し、悪用を防ぐことができる本人通知制度の手続きについて解説していきます。

戸籍謄本や住民票は他人も見れるもの

戸籍謄本には個人情報が全て記載されています。

そのため、戸籍謄本や住民票は厳格に管理されており、第三者の他人が簡単に悪用したり、閲覧できるものではありません。

しかし、法律に規定の範囲であれば、家族以外の他人でも戸籍謄本や住民票を閲覧できる場合もあります。

戸籍謄本や住民票を不正取得されると悪用される可能性がありますが、そもそも第三者でも閲覧できるものです。

配偶者や直系親族は自由に閲覧可能

まず、戸籍謄本や住民票は、本人の同意なしに取得できる範囲があります。

親族であればだれでも閲覧・取得できるというわけではありません。

  • 直系尊属または直系卑属でかつ血族であるもの
  • 配偶者

配偶者は夫からみた妻、妻から見た夫です。

直系尊属とは、子からみた親(養親)や祖父母で、義親は含みません。

直系卑属とは、親からみた子や孫です。

養子は含まれますが、子の配偶者は含まれません。

これらの親族であれば、自分以外の家族の戸籍謄本を自由に閲覧・取得できます。

親族でも同じ戸籍謄本に入っていない場合は、本人が署名した委任状があれば、代理人として請求できます。

委任状は自作したり、役所のホームページからもダウンロードできます。

戸籍謄本の悪用事例にて後述していますが、他人が委任状を偽造して戸籍謄本や住民票を取得した場合は、有印私文書偽造罪に問われますので絶対に止めましょう。

委任状なしで戸籍謄本も住民票も第三者が閲覧できる

戸籍謄本や住民票は委任状がなくても、第三者は閲覧や取得が可能です。

戸籍謄本や住民票の第三者の請求に関する内容は、法律(戸籍謄本法10条の2)の規定があります。

法律上で第三者が請求きるパターン
  • 自己の権利や自己の義務を履行するために戸籍謄本の確認が必要
    例:債権者(金融機関・不動産賃貸・個人など)や生命保険会社が責務の履行(債権回収)のために住民票で住所の特定や、債務者や保険金の受取人が死亡しており、戸籍謄本により相続人を特定する必要がある時
  • 国や地方公共団体の期間に提出する必要がある
    例:不動産(法務局)、相続税の申告(税務署)、遺産分割調停(家庭裁判所)などで、添付書類として住民票や戸籍謄本の提出が必要な時
  • その他の戸籍謄本を利用する正当な理由がある場合
    例:弁護士や司法書士などが業務遂行のため住民票や戸籍謄本が必要な時

上記のような範囲であれば、正当な理由があれば第三者の赤の他人でも戸籍謄本や住民票の閲覧ができます。

戸籍謄本や住民票を第三者が請求する際に、請求理由やその証拠書類の提出が求められます。

戸籍謄本や住民票を取得する人が第三者でも、委任状がある場合は第三者ではなく代理人となります。

同じ住所に居住していても、世帯を分けていて同じ住民票に記載されない人は、委任状がない場合は第三者=他人の扱いです。

第三者による戸籍謄本や住民票の悪用事例

戸籍謄本や住民票は第三者が取得したり閲覧できることがわかりましたが、中には取得した戸籍謄本や住民票を悪用する人もいます。

これまでに第三者に戸籍謄本や住民票が悪用された事件はあり、後を絶ちません。

しかし、戸籍謄本や住民票を不正に入手されたとして、どのように悪用されるのか、どんなことが起こるのか想像ができないという方が非常に多いです。

実際にどのような悪用事例があるのか、氷山の一角ですが戸籍謄本や住民票を悪用された事例をご紹介します。

探偵向けに行政書士が戸籍を不正請求

悪用というか不正取得された事例です。

ニュースになった(2021年8月)、行政書士による戸籍の不正取得です。

平成28年頃から3500通分を不正取得し、約7千万円の荒稼ぎしています。

浮気調査や遺言書作成などで各地の探偵に提供していたようで、現時点ではまだ「疑い」です。

行政書士は職務上請求することができますが、請求書に虚偽の理由を記載して、不正に取得していたとしています。

浮気調査されていた男性が「戸籍が不正に取得されている」と気付き、発覚したようです。

第三者が住民票を移動させ本人になりすまし

2015年に埼玉県で発生した住民票が第三者に悪用された事例です。

第三者となる犯人の男は不正に入手した運転免許証のコピーを悪用して女性になりすまし、住民票を移動(異動)させることで新しい住民票を発行しました。

住民票を取得することでその女性名義でクレジットカードを作成できるようになり、200万円以上を使い込みました。

クレジットカードの請求書についても住民票を置いている犯人の男性の元に届くようになっており、被害女性は悪用されていることに気づくことができなかったみたいです。

気になるのは、犯人の男がどのように被害女性の運転免許証のコピーを入手したのかということですよね。

犯人の男はアルバイトを募集するための偽の求人サイトを立ち上げ、そこに応募してきた女性から運転免許証のコピーを入手していました。

住民票の移動は運転免許証やパスポートなど、本人確認書類のコピーを同封して郵送することで行うことができます。

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犯人の男はこれを悪用し運転免許証のコピーから住民票を移動、そしてクレジットカードを不正に発行したという流れになります。

被害を受けたのはこの女性だけでなく、男のパソコンには運転免許証やパスポートなどのコピーが約2000人分保存されていたそうです。

その中から実際に悪用してクレジットカードを偽造し、総額1100万円以上の被害を出しました。

戸籍謄本や住民票の悪用事例「プライム事件」

戸籍謄本や住民票を悪用したプライム事件は、多くの第三者が関わっています。

プライム事件とは2011年に東京都内の「プライム総合法務事務所」の社長、同社の社員・司法書士、元弁護士、横浜の探偵社社長、京都のグラフィックデザイナーら5人が戸籍謄本や住民票の個人情報を不正に取得したとして逮捕された事件です。

この事件ではこれら5人だけでなく他にも第三者がいて、調査会社、携帯会社、ハローワーク、国交省技官、行政職員、警察官、電力会社などからも、多くの個人情報を不正入手して悪用した事実が明るみになりました。

まずプライム総合法務事務所の社長は、横浜の探偵社からの依頼で3年間で1万件以上の戸籍謄本や住民票を不正に入手しました。

そして不正に入手した戸籍謄本や住民票を悪用し、名古屋の情報屋に売ることで2億3500万円を稼いでいました。

戸籍謄本や住民票から入手した個人情報は名古屋の情報屋を介して他の企業などに販売されており、多方面にわたって悪用されていました。

この事件によって、情報屋が関与した個人情報不正売買ビジネスの全貌が明らかになり、結果的に様々な業種の中から逮捕者が出ました。

委任状の偽造で戸籍謄本を不正取得

2006年に名古屋市の興信所が委任状を偽造して、戸籍謄本を不正に入手した事例です。

結婚調査や素行調査があった場合、調査対象者に成りすまして委任状を作成していたようです。

事務所からは1500本以上の印鑑が見つかり、これまで数千件の戸籍謄本や住民票などの個人情報を集めていました。

「依頼内容は8割から9割が結婚相手の身元調査と浮気調査」との証言があり、未だにそういったニーズがあるためビジネスとして成り立っているのが現状です。

実際に依頼を受けた興信所や探偵社が行政書士などの権限を悪用した事例が多くあり、戸籍謄本の不正取得によって身元調査で縁談が破断になる、結婚差別を受けるということが起こっています。

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第三者からの戸籍謄本や住民票の悪用を防ぐには?

前述したように身元調査のニーズが高く戸籍謄本や住民票を不正取得したり、個人情報は莫大なお金となり、知らないうちに悪用されるリスクがあります。

第三者からの戸籍謄本などの戸籍の書類や住民票の悪用を防ぐためにはどうすればよいのでしょう。

悪用を防ぐ一つの方法として、各自治体で導入されている制度「本人通知制度」があります。

本人通知制度とは各自治体が住民票の写しや戸籍謄本などを、代理人や第三者に交付した際に本人に交付したことを通知する制度のことです。

本人通知制度の種類
  • 事前登録型本人通知制度
  • 被害告知型本人通知制度
  • 委任状型本人通知制度
  • 登録不要型本人通知制度

この4つの制度に分類されます。

これらの制度を導入している各自治体については、「本人通知制度ホームページ」より確認できるのであなたの自治体で導入されているのか確認してください。

また本人通知制度は法令等に基づくものではなく、各自治体が独自に定めて実施するものになっているため、未だに導入していない自治体もあります。

住民登録や本籍がある方であれば、誰でも制度を利用することができるので、第三者による戸籍謄本や住民票の悪用のリスクを考えると登録したほうがいいでしょう。

事前登録型本人通知制度

事前登録型本人通知制度は、登録している方の住民票の写しや戸籍謄本などを代理人や第三者に交付した際、本人に交付したことを通知する制度です。

自分が知らない間に第三者に戸籍謄本や住民票を請求されている、ということはなくなり、悪用されても早い段階で気づくことができます。

この制度を行っている自治体でも登録を行っている必要があるので、事前登録型本人通知制度を利用したい方は、市役所市民課及び市内各出張所窓口から登録しましょう。

被害告知型本人通知制度

被害告知型本人通知制度は、住民票の写しや戸籍謄本が他人に不正取得された場合、不正取得された本人に通知する制度になります。

事前登録型本人通知制度と違って、本人が登録していなくても戸籍謄本や住民票の不正取得が事件として確定した場合には、その段階で自動的に知らせてくれます。

この制度は事件が起きてから通知が来るので、通知が来た時点で第三者から悪用など何らかの被害を受けている可能性があります。

警察や弁護士に相談をしておいたほうが良いでしょう。

委任状型本人通知制度

委任状型本人通知制度は、委任した代理人が委任状によって戸籍謄本や住民票の写しを交付した場合、委任者に交付したことを通知する制度です。

あなたの同意がないのに他人に委任状を偽造されて、第三者が代理人として勝手に取得する、というのを防ぐことができます。

委任した人から、戸籍謄本や住民票の写しが悪用されることを防ぐ効果も期待できます。

登録不要型本人通知制度

事前登録型通知制度は、登録している方の住民票の写しや戸籍謄本謄本などを代理人や第三者に交付した際に、本人に交付したことを通知する制度でした。

この登録不要型本人通知制度は、登録しなくても第三者の請求で戸籍謄本や住民票を交付した場合、全ての市民に自動的に知らせてくれる制度になります。

第三者が勝手に取得したり、悪用に効果的です。

登録する必要がないので最も効力を発揮する制度になりますが、全市民の情報を管理することは難しくあまり導入は進んでいないようです。

第三者の悪用を防ぐ本人通知制度の手続きと効果

戸籍謄本や住民票の不正取得や悪用に有効な本人通知制度の登録は、役所の市民課や各出張所の窓口で手続きを行うことができます。

この制度の登録手続きは、ほとんどの役所で以下の2点が必要です。

  • 登録申込書
  • 身分証明書
    (運転免許証やマイナンバーカード、住民票の写し、戸籍謄本謄本など公的機関が発行したもの)

代理人が手続きする場合は、委任状と代理人の本人確認書類が必要です。

また、何らかの事情により直接窓口に足を運ぶことができない、もしくは代理人もいないという方の場合は郵送による手続きも可能です。

手続き方法や必要書類については、各自治体によって異なる場合があるので、あなたの自治体で必要なものを自治体のホームページから確認してみてください。

悪用を防ぐ本人通知制度の効果について

2012年7月11日に本人通知制度で初めての摘発が行われました。

逮捕された容疑者が行政書士に嘘の説明をしたのち、埼玉県の会社員の戸籍謄本と住民票の取得を依頼しました。

しかし、埼玉県の会社員は事前登録型本人通知制度に登録していたことで通知が届き事件が発覚しました。

このように他人が不正取得や悪用することに関して、本人通知制度は確実に効果を発揮してきています。

この事件が起きた2012年の時点では約200の自治体ほどしか本人通知制度を導入していませんでしたが、徐々にその効果が認められ2020年4月1日には699の自治体が導入しています。

第三者による戸籍謄本や住民票の悪用を防ぐためにも、全ての自治体で本人通知制度が導入を目指して欲しいですね。

支援措置で他人から戸籍謄本や住民票の閲覧制限もできる

あなたの戸籍謄本や住民票を第三者や家族に対して閲覧制限できる、住民基調台帳における支援措置というものがあります。

支援措置は悪用されない手続きというより、配偶者や恋人からのDV・児童虐待・ストーカーなどの被害者を保護するための手続きです。

支援措置は戸籍謄本や住民票の交付や閲覧を制限することで、被害者の個人情報(主に住所)が加害者に入手されないようにするための制度です。

閲覧や請求によって個人情報を悪用されることもあるので、安全性を確保する為に重要です。

住所を知られたくないだけなら住民票だけで済むように感じますが、戸籍の附票には住所の履歴が記載されているので、戸籍の閲覧制限も必要です。

支援措置を受けると、他人や家族など指定した特定の人が住民票や戸籍謄本が見られなくなる仕組みです。

支援措置の手続きの流れ
  1. 最寄りの警察署や支援センターにて「支援措置申出書」を作成してもらう
  2. 申出書を持参し役所の戸籍謄本課や市民課で支援措置の手続きを行う

支援措置の相談先は地域によって異なるので、役所のホームページや直接問い合わせて確認しましょう。

支援措置の手続きをしても、正当な理由とそれを裏付ける証拠資料があれば、厳格な審査のうえで第三者に交付や閲覧が認められます。

利害関係が明確な資料を持参した利害関係者や、弁護士などの職務上の請求があり、完全に拒否することはできません。

第三者による戸籍謄本と住民票の悪用事例と対策のまとめ

規定通りに委任状を用意して手続きを行えば、家族でなくても第三者の他人が戸籍謄本や住民票を取得することができます。

しかし、世の中には他人が委任状を偽造したりして、戸籍謄本や住民票を不正取得して悪用する事例もあります。

自分が知らないところで個人情報を悪用されていたら怖いですよね。

戸籍謄本や住民票を完全に第三者が閲覧できないようにするのは不可能ですが、通知制度や支援措置による閲覧制限など、他人や家族に悪用された際の有効な制度があります。

第三者などからの悪用が気になる方は、制度の登録の手続きを行いましょう。

身の危険を感じる状況の方は支援措置は必須です。

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