戸籍と性別

性同一性障害の戸籍変更の流れと条件とは?家庭裁判所での手続きを全て解説

戸籍の性別変更

日本では2004年から条件を満たせば性別変更ができ、毎年1000人近くが戸籍の性別を変更しています。

性同一性障害で戸籍の性別を変更するためには、性別適合手術が一つの条件となっています。

その後、家庭裁判所で性別変更の手続きを行い、ようやく戸籍の性別変更が完了します。

戸籍の性別変更には、具体的にどのような手術(性別適合手術)が必要なのでしょう。

性別適合手術を行うためには、通院や戸籍の手続きが必要です。

ここでは、戸籍の性別変更に必要な性別適合手術の種類や、手術を受けるまでの流れ、家庭裁判所での手続きの流れを全て解説します。

家庭裁判所が許可する性同一性障害の戸籍の性別変更の条件

(性別の取扱いの変更の審判)
第三条 家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる。
一 二十歳以上であること。
二 現に婚姻をしていないこと。
三 現に未成年の子がいないこと。
四 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。
2 前項の請求をするには、同項の性同一性障害者に係る前条の診断の結果並びに治療の経過及び結果その他の厚生労働省令で定める事項が記載された医師の診断書を提出しなければならない。
(性別の取扱いの変更の審判を受けた者に関する法令上の取扱い)
>>性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律

家庭裁判所が戸籍の性別変更を許可する条件で、現在は20歳以上が戸籍の性別変更の条件となっていますが、令和4年4月1日から年齢の条件が「18歳以上であること」に改編されます。

2つ目の条件「婚姻」は、現在のことで過去に婚姻歴があっても戸籍の性別変更ができます。

3つ目の条件「子供(通称:子なし要件)」ですが、かつては「現に子がいないこと」となっていましたが、平成20年6月18日法律第70号により、現在は「未成年の子がいない」となりました。

4つ目の条件「生殖腺がないこと又は永久的に欠く状態にあること」と5つ目の条件「他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えている」は、手術に関する条件です。

家庭裁判所が性同一性障害を理由にした戸籍の性別変更を許可する条件として、後述していますが性別適合手術(SRS)が必須となっています。

乳腺摘出は必須ではないようです。

手術に関してはいろんな声があり、将来的には日本も撤廃される可能性があります。

https://koseki-guide.com/seibetsuhenkou-kaigai/

性同一性障害が戸籍の性別変更ができるまでの流れ

戸籍の性別変更は家庭裁判所へ申立てるのですが、それまでに必要な手続きや流れがあります。

性同一性障害で戸籍の性別変更をするためには、ガイドラインに沿うのか沿わないのかで、手続きの手順や性別変更までに必要な期間が変わります。

ガイドラインに準拠するのが「正式な手順」となっていますが、条件を満たせば戸籍の性別変更ができるようになっています。

ガイドラインは医師に対する治療方針であり、性同一性障害の当事者が守らなければならないものではありません。

ただし、ガイドラインを重視する家庭裁判所もあるようで、ガイドラインに準拠して戸籍の性別変更を進めたほうがスムーズかもしれません。

戸籍の性別変更はいろんな条件がありますが、戸籍の改名や性別変更がまだできていなくても、保険証の表記に関する手続きは誰でもできます。

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1.性同一性障害の専門病院へ受診

性同一性障害の診断書が取得できる病院へ受診します。

ガイドラインに沿う場合は、数ヵ月から1年程度をかけて2名の医師がカウンセリンを行い身体検査を行います。

身体検査は婦人科や泌尿器科で行い、性分化疾患や染色体異常がないことなどを確認します。

その後、2名の医師の意見書と身体検査をした医師の診断書を第三者組織に提出し、1度目の判定会議にかけられます。

この判定会議が通ると、性同一性障害の診断書が取得でき、身体的治療(手術やホルモン注射)に進むことができます。

ガイドラインに沿わない場合は、数回のカウンセリングや、当日カウンセリングを受けて診断書を即日で発行する病院もあります。

性同一性障害のガイドラインに基づく診療は「岡山病院ジェンダーセンター」などの大学病院が有名です。

次期国際疾患分類(ICD-11)から性別違和(性同一性障害)が精神疾患から外されるため、現在ガイドラインの見直しを行っています。そのため今後の手続きが変わる可能性があります。

2.ホルモン治療や手術を受ける

カウンセリングや身体検査を終えて性同一性障害の診断書を取得したら、身体に対する治療に進みます。

  • FTM
    (女性→男性)
    ・テストステロンの注射
    (男性ホルモン注射)
    ・乳房摘出術(胸オペ)

  • MTF
    (男性→女性)
    ・エストロゲン補充
    (女性ホルモン注射)
    ・乳房形成(豊胸)

ガイドラインに沿わなくてもホルモン注射や手術ができる病院もありますが、性同一性障害の診断書がないと治療できない場合がほとんどです。

乳房摘出や乳房形成はホルモン注射をしていなくても可能な場合があります。

3.性別適合手術(SRS)を受ける

ガイドラインに沿う場合は、ホルモン治療を開始して1年以上経過すると、改めて2名の医師が意見書を作成し、2度目の判定会議にかけられます。

2度目の判定会議で許可されたら、いよいよ性別変更するための性別適合手術(SRS)にすすみます。

性別適合手術は国内だと予約待ちで時間がかかることがありますが、昔よりも手術ができる病院が増えており、病院の環境もよくなりつつあります。

それでも圧倒的に実績のある海外のタイで性別適合手術を受ける当事者は多く、現地の病院や旅行会社と提携しサポートしてくれるアテンド会社も多く存在します。

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戸籍の性別変更の条件には「性器の近似(男性なら女性・女性なら男性)」がありますが、どこまでの手術でそのように判断されるのかが問題です。

FTM(女性から男性に性別変更)の性別変更の条件は、子宮卵巣摘出までの手術、MTF(男性から女性に性別変更)の性別変更の条件は、睾丸摘出・性器切除というのが一般的です。

FTMの性別適合手術 MTFの性別適合手術
・子宮卵巣摘出
・膣閉鎖
・尿道延長
・外性器形成
・睾丸摘出
・性器切除・陰核形成
・造膣

2007年頃まではFTMなら尿道延長などの手術が必須でしたが、上記の手術で戸籍の性別変更ができます。

ただ、最終的な判断は家庭裁判所なので、必ず許可されるわけではありません。

また、ガイドラインに沿っていても沿わなくても、海外で性別適合手術をすることも可能です。

海外での手術は主にタイですが、ホルモン注射を1年以上継続している、性同一性障害の診断書があるなどの条件があります。

英文の診断書が必要になることがあるので、取得できる病院を探しましょう。

ガイドラインに沿う場合は、専門機関でカウンセリングや身体検査を行い、2度の判定会議をクリアした後に性別変更に進めます。

ガイドラインに沿わない場合は、即日発行や簡易カウンセリングで診断書を取得→ホルモン注射・乳腺摘出→海外や日本で性別適合手術→性別変更と進めます。

診断書があれば大体は戸籍の性別変更に必要な手術ができますが、2013年には日本で乳房摘出を受けた戸籍上女性の死亡事故もあります。

海外でもトラブルはあるので、医療設備が整っていなかったり、モニター価格などに惑わされず、病院やアテンド会社選びには注意しましょう。

4.家庭裁判所へ性別変更を申立てる

国内や海外で性別適合手術を受けたら、カウンセリングや治療で通院している病院にて、戸籍の性別変更用の診断書を作成してもらいます。

戸籍の性別変更は、性別変更用の診断書と申立てに必要な書類を用意して、家庭裁判所で手続きを行います。

家庭裁判所から許可が出たら、はれて戸籍の性別変更ができます。

家庭裁判所での戸籍の性別変更の手続き

戸籍の性別変更は家庭裁判所の許可が必要です。

必要書類を用意して、家庭裁判所へ申立てましょう。

性別変更と改名の申立てを同時に行うこともできるので、その場合は改名と性別変更の必要書類を用意しましょう。

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申立書の書き方

家庭裁判所へ申立てるために、まずは申立書を記入します。

上記のリンク先に記入例がありますが、簡潔に申立書に書く内容をまとめました。

私●●は幼少期の頃から性別に違和感があり、悩みながら過ごしてきました。
●年●月●日からガイドラインに準拠して●●病院に通院し、●年●月●日に診断が下りました。
●年●月●日からホルモン療法を受け、●年●月●日には性別適合手術を受けました。
現在の生活状況は、家族・友人・職場などで完全に望みの性別(女性/男性)で認識されています。
外見も中身も女性(男性)であるのに、戸籍の性別が男性(女性)であることは、周囲を混乱させてしまい社会生活上とても不便です。望みの性別が広く認知されているため、戸籍の性別が通用しないという状況です。
このような事情で性別変更の審判を求めます。
なお、申立人に子供はいません。
(成人した子供がいる場合はその旨を記入)

申立書には、主に性同一性障害と診断されるまでの経緯、治療の内容、生活状況を書きます。

  • 性同一性障害と診断されるまでの経緯
  • ・いつからどのような性別違和があるのか
    ・いつから病院に通院したのか
    ・いつ診断されたのか
    ・ガイドラインに沿っているのか

  • 治療の有無
  • ・ホルモン療法をいつから受けているのか
    ・性別適合手術はいつどこで受けたのか

  • 生活状況
  • ・望みの性別で生活していること
    ・望みの性別が社会生活に馴染んでいること
    ・戸籍上の性別が生活に支障が出ていること

性別変更用の診断書

性同一性障害の性別変更用の診断書を用意します。

家庭裁判所へ提出する診断書は1枚でもいいですが、2名の医師のサインが必要です。

医師のサインは精神科だけでなく、内科・婦人科・美容外科などどこでもいいようです。

性別変更用の診断書は上記のリンクからPDFをダウンロードして、医師に書いてもらうこともできます。

戸籍の性別変更の診断書は改名用の診断書(一般的な診断書)とは違うため、性同一性障害の専門病院だとスムーズです。

タイなどの海外で性別適合手術を受けると、英文の手術証明書を受け取ります。

戸籍の性別変更に手術証明書は必須ではありませんが、海外の手術証明書を提出する場合は、ご自身でもいいので日本語に翻訳したものも添付します。

申立て費用

家庭裁判所へ性別変更を申立てる費用は、収入印紙代+切手代です。

それ以外に戸籍謄本の発行手数料1通450円~と、性同一性障害の戸籍の性別変更用のる診断書6千円~が必要です。

性別変更の診断書は2万円をこえる病院もあるので、病院によってかなり金額に差が出ます。

戸籍

出生から現在までのすべての戸籍謄本は、役所にそのように伝えるともらえます。

戸籍の状態によりますが、戸籍謄本や改製原戸籍(かいせいはらこせき)などの種類があります。

転籍している場合は戸籍を集めるのが大変なので、郵送での取り寄せが便利です。

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家庭裁判所での性別変更の手続きと流れ

性同一性障害で改名される方もいると思います。

その時に書面照会や面談があった方はよくわかると思いますが、性別変更も改名の時と手続きの流れはあまり変わりません。

家庭裁判所での手続きの流れ
  1. 家庭裁判所へ申立てる
  2. 書面照会・面談
  3. 審判・結果

※申立てから許可まで平均約1ヵ月の期間が必要

戸籍の性別変更の手続きは、自分の住民票を置いている家庭裁判所です。

裁判所の管轄区域|裁判所」から家庭裁判所の場所を確認できます。

家庭裁判所の「家事事件」を担当している窓口で、手続きを行いましょう。

性別変更の申立ては郵送でも可能です。

申立ててから数週間後に書面照会や面談が行われることもあれば、結果が郵送されることもあります。

面談したその日に結果がわかることもあり、家庭裁判所によって許可されるまでの期間が異なります。

また、家庭裁判所の判断で書面照会や面談を実施するのかどうか決まります。

書面照会は家庭裁判所との書面でのやり取りで、面談は聞き取りです。

現在どのような性別の支障があるのか、戸籍の性別変更がなぜ必要なのかの聞き取りや、性同一性障害の診断書の確認などが行われます。

家庭裁判所から許可が出た後の手続き

戸籍の性別変更の申立てが家庭裁判所に許可されたら、自動的に戸籍の性別が変更されます。

改名の場合は、家庭裁判所から発行される許可証を持って、役所で戸籍の名前を変更する必要があるのですが性別変更は不要です。

戸籍の性別変更の手続きは不要ですが、免許証や保険証など性別変更に伴う手続きは必要です。

免許証に性別の表記はないですが、性別も含めて登録されているため、なるべく早めに変更しましょう。

免許センターもしくは警察署でも性別変更できる場合があります。

性別変更したことがわかる書類(戸籍謄本・許可証)を持参しましょう。

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性同一性障害の戸籍の性別変更と家庭裁判所での手続きのまとめ

日本では手術なしでは戸籍の性別変更はできません。

また、性別変更の条件である手術要件(性別適合手術)のとらえ方には、医師や家庭裁判所によって違いがあります。

性同一性障害の専門医と相談しながら、戸籍の性別変更の手続きを進めるといいでしょう。

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