性同一性障害でFTMやMTFの方が戸籍の性別を変更するためには、性別適合手術(性転換手術)が必要ですよね。
性別適合手術は性別を男性に変更するFTMと、性別を女性に変更するMTFでは異なりますが、手術を受けて後悔する方もいます。
性別適合手術を後悔している方もいれば、戸籍の性別を変更までした後に後悔し、戸籍の性別を元に戻したいという方もいます。
性同一性障害でFTMやMTFであることが間違いだったと気付いても、手術を受けてしまうと元の体には戻らないですし、何よりも大変なのは戸籍の性別を変更してから後悔することです。
現状としてFTMやMTFの方の中には手術や戸籍の性別変更に後悔して、性別を再変更したいという方もおり、実際に再変更に踏み切った実例があります。
ここでは性別適合手術を後悔している性同一性障害の方や、戸籍の性別を再変更する方法についてまとめています。
性別適合手術を受けても戸籍の性別は再変更できる
性別適合手術を受けて後悔したら、戸籍の性別の再変更はできないのでしょうか。
現状ではかなり難しいです。
性別の再変更の手続きはない
性同一性障害として手術を受けて戸籍の性別を変更していても、戸籍の性別を元の性別に戻すことは可能です。
その実例として性別適合手術を受けて戸籍を変更した後に、元の個性の性別に戻した性同一性障害だった方を後述しています。
しかし、誰でも一度変えた戸籍の性別を戻すことはできず、かなり難しいものとなっています。
手続き上も、元の戸籍の性別に戻す手続きはないため、性別の変更を取り消すという手続きとなります。
日本では性同一性障害で戸籍の性別を変更できても、その性別を再変更することは想定されておらず、性別を元に戻す、変更するという手続きはできないのです。
ただ、性同一性障害を抱えている方は、保険証の性別や名前の表記を変えることができます。
戸籍の再変更を望んでいる方ができるかは不明ですが、検討されるといいと思います。
戸籍の性別の再変更を希望する人数
性同一性障害だった方が、戸籍の性別の再変更を望む人数はどれくらいなのか。
日本だと、はりまメンタル院長の針間医師が把握している人数は10人程度だそうです。
あまり表になりにくいことなので、実際はもっといるかもしれません。
アメリカでは性別を変更した方の中で再変更を望むのは、なんと8%というデータもあります。
FTMやMTFで戸籍の再変更と性別適合手術を後悔した実例
性同一性障害のFTMやMTFが性別適合手術で後悔する理由は、いくつかあります。
- 性別適合手術が失敗した
- 性別適合手術で体調不良になった
- 性同一性障害は勘違いだった
- 親に懇願されて戸籍を戻したい
- 精神疾患が原因で勘違いした
人によって性別適合手術や戸籍の性別を変更して後悔する理由はさまざまです。
FTMやMTFの方が体調不良になって後悔するというだけでなく、中には元の性別に戻したい、戸籍の性別を再変更したい、と考える方もいます。
実際にFTMやMTFの方が戸籍を元に戻して再変更したいと考えるほど後悔している方や、戸籍の性別を再変更した方の実例を見ていきましょう。
FTMで戸籍の性別を再変更した実例-その1-
>>子どもが産めず、声の低い身体に…性別を“再変更”した当事者の思い 「性同一性障害特例法」「性自認」をめぐる課題を考える
性同一性障害のFTMとして8年前(2012年)に戸籍の性別を男性に性別を変更し、昨年2019年に性別を女性に戻して再変更。
子育てに苦しむ母親をみていつしか女性に対してネガティブなイメージを持つようになり、普通の女性として生きずづらさを感じていた。
20代の頃にFTMと出会い、治療すれば男性として暮らせると感じ、「男性にならなければいけない」この一心で2年以上をかけて戸籍の性別を女性から男性に変更した。
男性として生活する中で、男性として扱われることが苦しくなり、「これまで感じてきた女性としての違和感」は男性になることで解消されるものではないと気付く。
手術の後悔でFTMが女性に戻った実例-その2-
ガイドラインにそわず、性同一性障害のFTMとして戸籍の名前の改名、ホルモン注射、胸の手術を受けたが、その数年後に勘違いに気付き女性として生きている。
過去に虐待やイジメを受けており、同じ職場にMTFがいたという環境から性同一性障害と思い込み男性になりたいという気持ちが強くなった。
本来の自分に気づき女性に再変更した実例-その3-
>>女性から男性へ、男性から女性へ。2度の性転換をした本人が語る「あの時、スカートをはかない選択ができたなら」 まぐまぐニュース!
後悔した実例ではないのですが、戸籍の性別を女性から男性に変更し、そして女性に再変更した実例としてご紹介します。
往復性転換という言葉を作った方。
(こっつん/ユズシカ)
幼少期の頃から女の子として扱われることに違和感があった。
社会に出てから同じ境遇をもつ虎井さんと出会い、彼がスタンフォード大学の病院で最終手術を受ける際に付添人として渡米。
この経験から性転換の覚悟を固め、20代で戸籍の性別を女性から男性に変更。
その後バイセクシャルの既婚男性と知り合い、「好かれたい」という思いをいだくようになる。
しかし女性になりたいという気持ちはなかったものの、これが戸籍の性別を再変更するきっかけとなった。
30代で男性であることに違和感を持ち、39歳に女性になるため手術を受け、約3年かけて2度めの性別変更の手続きを行い再び女性になった。
女性に戻ったというよりも、「長い時間をかけて『中性の自分』を求めていたのだと思う」とのこと。
※虎井さんは「性同一性障害者特例法」の成立に携わり、「3年B組金八先生(第6シリーズ)」に登場する鶴本直(上戸彩)のモデルになった方
海外の戸籍を変えて後悔しているFTMの実例-その4-
>>「また女性に戻りたい」女性から男性に性転換したトランスジェンダーの後悔(英)
男性と結婚したが、44歳のときに女性であることに違和感を感じ、性同一性障害(トランスジェンダー)であると診断される。
その翌日にはホルモン注射を始め、名前も改名し、その数か月後には胸の手術を受けて、それ以降の全ての手術を受けて体はほぼ男性に。
しかし、それから17年過ぎたころに、それまで男性になるために努力したが情緒不安定となりカウンセリングにて性同一性障害ではなくPTSDと診断。
過去に父親からの性的虐待があり、「女性の体でなければ・・」という心境になっていたことに気付く。
2019年に女性ホルモン治療を開始して女性に戻る生活をしている。
MTFが戸籍を再変更した実例-その5-
2011年にタイで性別適合手術を受けて戸籍を変更。
その後、生活が混乱する中での思い込みであったと後悔し、元の性別での生活を送るようになった。
2017年6月に戸籍の性別を再変更し、元の性別に戻した。
MTFが戸籍の再変更を求めている実例-その6-
>>性別、戻したいのに…戸籍の再変更、高いハードル朝日新聞DIGITAL
子供のころから女装に興味があり、自身の性別に違和感を持っていた。
2003年に性同一性障害の診断を受け、2006年に性別適合手術を受けて戸籍を女性に変更した。
2009年に女性として男性と結婚したが半年で離婚し「やはり男性では」という気持ちが消えず、2014年に性自認が男性であると診断された。
2015年に女性と交際し戸籍の性別を戻して結婚を希望しており、2度目の戸籍の再変更(訂正)を求めている。
FTMやMTFが戸籍の性別を再変更するためには?
性同一性障害のFTMなら戸籍の性別を女性から男性に、MTFなら戸籍の性別を男性から女性に変更したら、その後の再変更の手続きはどのようになるのでしょう。
LGBTに理解のある弁護士を探す
戸籍の性別を再変更して戻したい場合、性別変更の取り消しという手続きを家庭裁判所で行います。
申立ても必ず許可されるものではなく、特殊な手続きなので必要書類などについて専門家へ相談するのがいいでしょう。
FTMやMTFの裁判について調べてみると、性同一性障害に理解のある弁護士もいます。
「南和行弁護士(なんもり法律事務所)」は、性別の再変更の代理人を務めた経験があるので、相談されるといいかもしれません。
性同一性障害の診断が下りた病院へ相談
病院はどこでもいいですが、まずは最初の診断が下りた病院へ相談しましょう。
戸籍の性別の再変更は、性同一性障害が誤診であったことがわかる2人以上の医師の意見書が必要です。
医師が性同一性障害という診断を誤診だったと認めることは、損害賠償のリスクもあり難しい問題です。
たとえあなたの勘違いや思い込みによって、医師が性同一性障害であると誤診せざるをえない状況であったとしても、そう簡単に応じてくれないかもしれません。
なぜ誤診させてしまう状況になったのか、医師に素直な気持ちを伝えましょう。
最初にお伝えした「はりまメンタルクリニック」では、戸籍の性別を再変更したいという相談を受けるそうなので通院できる方は相談してみるといいかもしれません。
FTMの方が戸籍の再変更をした2のケースで紹介したリンク先の動画にも出演されています。
性別適合手術や戸籍の性別変更後に後悔したら?
FTMやMTFで手術に後悔していたり、戸籍の性別を再変更したいと願うなら、1人で悩みを抱えることはやめましょう。
そうはいっても相談する場所がないという方もいると思います。
そんな時は理解のある病院、FTMやMTFの自助団体(NPO法人など)なら相談しやすいのではないかと思います。
同じ悩みを抱えた当事者はあなただけではないはずです。
全国にはFTMやMTF(LGBT)の自助団体や病院があり、性同一性障害の当事者同士のネットワークも広いでしょう。
自助団体によって目的や方向性が異なるので、選び方には注意してください。
性別を再変更できてもその後の生活も考える必要があるので、後悔して1人で悩むよりは自助団体や病院などを通して交流してみるといいでしょう。
性別適合手術で後悔する実例と性別の再変更のまとめ
性同一性障害で、FTMやMTFとして性別適合手術を受けて、戸籍の性別を変更したら、再変更することはかなり難しくなります。
FTMやMTFだった方が戸籍の性別を再変更した(希望している)実例はあるものの、かなり稀なケースでしょう。
もしFTMやMTFとして性別適合手術を受けて後悔したら、まずはLGBTに理解のある機関に相談しましょう。