事実婚でやっておくべき手続きがいくつかあります。
よく知られているのは住民票の続柄の変更ですが、それ以外にも事実婚を証明する方法や手続きがあります。
ここでは事実婚の関係性を証明する手続きについてまとめています。
LGBTQの同性パートナーに関しても、有効な手続きがあるので参考にしてくださいね。
事実婚に必要書類や手続きは不要
事実婚とは結婚する意志があり夫婦としての生活実態がある状態です。
内縁との違いは、事実婚の場合は「当事者間の合意」で行われますが、内縁の場合は「そういった合意がない形」で行われる部分があることです。
また事実婚は法律婚とは異なり、法律上の婚姻手続きを行いません。
事実婚は同じ戸籍に入ることがない状態で、夫婦と同等の関係を持つ状態を意味します。
なので、事実婚の手続きは必要ないのですが、法的手続きや行政や社会的なサービスを受けるためには、事実婚の証明ができるように手続きをしておく必要があります。
事実婚を住民票で証明する手続き
事実婚するなら、事実婚を証明するための手続きを行います。
一般的に住民票の手続きがあります。
住民票の手続き
お住いの市区町村の役場で手続きを行います。
必要書類は申立書(役所に備え付け)や自治体によって戸籍謄本か抄本が必要です。
独身であるか、重婚でないかを確認するためです。
住民票の記載内容
住民票を利用して事実婚を証明する場合は1人を世帯主とします。
もう一方の続柄欄に「夫(未届)」または「妻(未届)」と記載しましょう。
住民票の事実婚の記載を断られた場合
「夫(未届)」「妻(未届)」の記載ができない場合があります。。
役所に前例がなかったり、役所の担当者に周知されていないと、同居人の記載になるようです。
この場合は夫(未届)妻(未届)の続柄の記載ができることや、法的効力があることを伝えましょう。
参考資料として、総務省通知のコピーや法律上の根拠のコピーを持参するといいでしょう。
総務省通知
下記10ページにある世帯主と続柄の記載方法の部分をコピーします。
>>総行住第17号平成24年2月10日「住民基本台帳事務処理要領の一部改正について(通知)」
健康保険法の条文
(定義)
第三条
7一 被保険者(日雇特例被保険者であった者を含む。以下この項において同じ。)の直系尊属、配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下この項において同じ。)、子、孫及び兄弟姉妹であって、主としてその被保険者により生計を維持するもの
>>健康保険法3条7項1号
厚生年金保険法の条文
(定義)
第三条
2 この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。
>>厚生年金法3条2項
これらの社会保障は法律上「事実上の婚姻関係と同様の事情にあるもの」への権利が保障されています。
事実婚をしたら事実婚契約公正証書の手続きをしよう
住民票の手続きは事実婚を証明することができますが、さらに公正証書の手続きをして大きます。
事実婚契約書は事実婚の証明の手続きというより、法律婚と同等の権利を持つための手続きです。
事実婚契約公正証書に加えて遺言書を2つ目の公正証書として用意するといいでしょう。
公正証書とは?
公正証書とは、権利や義務に関する契約を公文書として公証人(法務大臣に任命された公務員)が認証した書類です。
ビジネス取引などの一般の契約書に比べると信頼性の高い証書とされます。
公正証書には事実婚契約書や遺言書などがあり、財産分与や慰謝料など法律婚の手続きをしたときと同じ権利を持つことができます。
急な事故や病気で治療に関する判断や病院での手続きもできるようになります。
口約束だけでは不安ですから、万が一の時のために公正証書の手続きもやっておくと安心です。
公正証書は事実婚の証明としても使える書類です。
事実婚契約書には公正証書(事実婚契約公正証書)と私署認証があります。
私署認証とは私文書の認証のことで、事実婚契約書も私文書です。
公証人が保証し紛失しても公証役場で再発行ができるため、安心性や信頼性の観点から公正証書(事実婚契約公正証書)の方がいいとされます。
事実婚契約書の内容
夫婦は婚姻と同等の関係を持ち夫婦として生活することや、共同生活にの費用の分担義務やお金に関する取り決めなどを記載します。
- 婚姻意思の確認
- 夫婦としての権利と義務
- 生活の決まり事
- 子供について
- 関係解消の条件
(不貞行為) - 親権・養育費・財産分与
- 慰謝料
- 医療行為への同意
これらの内容を事実婚契約書に記載します。
公正証書の内容は自分たちで考えて作成します。
公正役場で一から親切にに指導して作成できるものではありません。
不安な方は、行政書士や司法書士など士業の方に任せましょう。
事実婚契約書のほかに準婚姻契約書もありますが、好みの問題なのでどちらでも好きな方を選びましょう。
公正証書に必要な書類
公正証書の内容によって必要書類が異なります。
多くが写し(コピー)で済みますが、原本が必要な場合もあります。
当事者本人が作成する場合、印鑑証明と実印・運転免許証と認め印・マイナンバーカードと認め印などのいずれかが必要です。
遺言書は預貯金の金融機関の口座情報(通帳の写し)や遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本が必要です。
内容によって必要書類が変わるため公証役場に問い合わせましょう。
公正証書の手数料と作成費用
公正証書の手数料は政令で定められています。
手数料の一部
- 100万円以下は手数料5000円
- 200万円~500万円以下の手数料11000円
- 500万円~1000万円以下17000円
公正証書の手数料は、公正証書の内容(支払金額や不動産)などにより決まるため、契約上の給付額が多くなると公証人手数料が高くなります。
公正証書の依頼費用(作成費用)
- 公正証書の作成費用5万円前後~
- オーダーメイドの作成費用8万円前後~
公正証書の内容が複雑になったり、手続きを一任するなど、依頼内容によって変動します。
行政書士や司法書士など事務所によって作成費用は異なりますが、おおよそ安くて3万円くらいです。
今はネットでも簡単に安く依頼できます。
>>婚姻契約書(準婚姻契約書・事実婚契約書)をネットで依頼する方法
LGBTQ(同性)パートナーシップ制度と手続き
同性同士のパートナーの証明書として、自治体が行うパートナーシップ宣誓制度があります。
同性にかかわらずLGBTQカップルに対して、婚姻に相当する関係を証明する書類を発行することができます。
パートナーシップ制度は、県によって同性に限らず異性カップルが利用できます。
これにより社会的に配慮やサービスが受けやすくなるメリットがあります。
パートナーシップ制度と事実婚との違い
事実婚の場合は住民票に「夫(未届)」「妻(未届)」と記載されるため、事実婚の関係性が証明できます。
パートナーシップ制度の場合、住民票の続柄の記載は「世帯主と同居人」や一部の市区町村では「世帯主と縁故者」といった表記にとどまり、婚姻の関係性を証明することができません。
同性パートナーの合意契約書(公正証書)
LGBTQの同性カップルも事実婚と同様に公正証書を作成することで、同性パートナーへ義務や権利を発生させることができます。
公正証書は、事実婚契約公正証書・準婚姻契約公正証書・同性パートナー合意契約公正証書などがあります。
これらはパートナーシップ制度を利用する際の提出資料(公正証書による二人の関係証明)の一つです。
どれも公正証書としての効力は同じで、タイトルが違うだけです。
結婚に準じた内容として、同居生活や努力義務や財産管理や医療現場の手続きなど、多岐にわたっての取り決めが行えます。
理解が進んでいるとはいえ、公証人によって「同性婚」は法律上は認められていないとして、一部の記載内容の制限や表現の変更が求められることがあるようです。
住民票以外の事実婚の証明
住民票以外にも事実婚を証明できる手続きがあります。
- 賃貸借契約書
契約書の同居人の続柄に「内縁の夫・妻」「夫・妻(未届)」「婚約者」と記載 - 給与明細
給与明細書に扶養人数1という記載がある - 子供の認知
生まれた際に認知届を提出
胎児は母親の同意・成人していれば子供の同意が必要 - 民生委員発行の事実婚証明書
民生委員会所属の民生委員に事実婚証明書を依頼してみる - 親族の認知
- 健康保険の被扶養者になる
- 結婚式を挙げる
全てできるわけではありませんが、可能な範囲で確認や手続きをしておくといいでしょう。
事実婚の手続きと住民票の記載内容のまとめ
事実婚でまずやる手続きは住民票の続柄の記載です。
これをやっておくだけでも事実婚の証明ができ、法的な効力も発生します。
LGBTQの同性パートナーに関しても、パートナーシップ制度や合意契約公正証書の作成で事実婚と同じように権利や義務が発生します。
公正証書を作成しない人もいますが、異性カップルも同性カップルも作成しておきましょう。