現在の法律では内縁関係だと法定相続権がありません。
これは異性パートナーも同性パートナーも同じです。
この場合、遺言書を残しておくと、同性パートナーに財産を相続させることができます。
遺言書はLGBTの方だけでなく、戸籍の入籍手続きをせずに事実婚(内縁関係)のまま生活している異性カップルも利用される手続きです。
ここでは同性パートナーの遺言書の注意点や、遺言書以外にも財産(お金)を相続させる手続きがあるのでご紹介します。
LGBTの相続は遺言書以外にも手続きがある
LGBTの同性カップルで相続の手続きをするなら、よく知られているのは遺言書です。
不動産や預金などのお金だけでなく、ペットの遺贈も可能です。
遺言書は法定相続人でなくても、第三者を相続人にしたい場合も有効です。
同性カップルでパートナーを相続人にする場合、遺言書以外にもできる手続きがあります。
それが生前贈与です。
同性パートナーについて親族が理解があるように見えても、実際にその時にならないとわかりません。
同性パートナーが亡くなった際に、相続で争うことになる可能性もあります。
一生涯のパートナーがいるなら、遺言書や生前贈与で対策しておきましょう。
それぞれ相続されるための手続き方法や注意点があるので下記にてまとめています。
同性カップルの相続手続き「遺言書」の注意点
同性カップルの相続で遺言書の注意点から見ていきましょう。
遺言書を作成するならLGBTに理解のある専門家に依頼するのが賢明です。
ちなみに同性パートナーの場合、法律上は他人とるため、生命保険金も含めて遺産まるごとが課税対象です。
遺言書は公正証書が良い
遺言書は自筆証書遺言と公正証書遺言の2つがあります。
- 自筆証書遺言書
自分で手書きし日付・氏名・押印
同性パートナーの死後、家庭裁判所で検認の手続きが必要
相続人の立ち合いや委任状が必要 - 公正証書
公正役場で公証人に作成してもらう遺言書
証人2人が必要で相続財産の額によって手数料が変動する
無事にパートナーに財産を相続させるために、信頼度が高く検認がない公正証書がいいです。
基本的には公正証書のほうが確実で安全性があります。
公正証書の手数料の目安は数万円です。
遺言執行者を指定する
遺言執行者がいれば、同性パートナーや親族などの相続人が勝手に名義変更や相続の手続きをすることができません。
(民法1012条・民法1013条)
遺言執行者がいれば「誰が相続手続きをやるのか?」でトラブルになることもなくなります。
これまでは相続人の代理人と呼ばれていましたが、2019年の法改正で遺言執行者となりました。
遺言執行者は信頼でいる人を選び、未成年者や破産者はなれません。
遺言執行者がいれば、同性パートナーの死後、遺産分割や相続人の戸籍の収集など多くの相続手続きができます。
認知や相続人の廃除(財産を相続させたくない人)について遺言書に記載している場合は、遺言執行者のみ手続きができるため、指定しておきましょう。
他に、専門家(弁護士・行政書士・司法書士にも依頼)を指定したり、家庭裁判所に申立てれば選任してもらえます。
遺言執行者に相続人を選んだ場合は報酬がない場合もありますが、専門家に依頼する場合、おおよそ遺産総額の1%~3%が相場です。
>>業種別!遺言執行者の7つの報酬相場と報酬額が決まる3つのパターン
祭祀主宰者を指定する
祭祀主宰者(さいししゅさいしゃ)とは、主に葬儀の喪主や墓守です。
本来なら喪主となる同性パートナーが、葬式に参加できないということがあります。
下記にて40年以上連れ添った同性パートナーの葬式の喪主や火葬の参加を拒否されたりして、精神的苦痛で訴訟した判例を載せています。
養子縁組も相続する方法の一つですがデメリットがあるので注意しましょう。
他にも、同性パートナーのお墓もどこにあるのかさえわからないというこもあります。
祭祀主宰者を同性パートナーに指定しておくと、そういったトラブルを回避することができます。
もちろん親族の理解やカミングアウトの有無にもよると思いますが、必要な方は指定しておきましょう。
遺留分の請求に注意
LGBTの同性カップルが遺言書で相続させる際に、注意したいのは遺留分です。
遺留分とは、相続人に認められた最低限の相続保証で、同性カップルからすると少し厄介なものです。
遺言書を書いても、すべてを同性パートナーに相続させる保証がありません。
遺留分権利者は配偶者・子供・親です。
同性カップルで互いの相続人に兄弟や姉妹だけなら、遺言書だけで同性パートナーに全財産を残すことができます。
現実的に同性パートナーの親の遺留分が問題になることが多いです。
同性パートナーに全財産をの残したくても、相続人から遺留分が請求される可能性があり、トラブルになることもあるでしょう。
しかし、親だけが相続人なら遺留分は全体の1/3です。
2/3は同性パートナーが相続できるので、過度にトラブルを心配する必要はないでしょう。
包括遺贈
- 特定遺贈は具体的に相続財産を指定
- 全部包括遺贈は全財産
- 一部包括遺贈は財産の1/2
包括遺贈は遺言者の財産を割合で相続します。
マイナスの財産も自動的に引き継ぎます。
一部包括遺贈は財産の内容によって遺産分割協議が必要です。
同性パートナーと家族の話し合いは上手くいけばいいのですが、余計なトラブルを回避するなら、特定遺贈か全部包括遺贈にするのがいいでしょう。
同性カップルの相続は生前贈与の手続きでも可能
生前贈与とは、同性パートナーが存命中に財産を贈与することです。
自分や同性パートナーが生きているうちに財産を渡します。
とくに公的な手続きは不要なのでいつでも誰でも可能な相続方法です。
相続税の対策にもなる
贈与税は原則として1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与を受けた金額に課税されます。
生前贈与は年間110万円以下なら贈与税が発生しません。
現金を手渡しすることが可能です。
生前贈与は相続税の対策にもでき(暦年贈与)、この場合は贈与契約書があった方がいいです。
配偶者なら贈与税の控除が受けられ、同性パートナーの不動産の名義変更で贈与契約書を用いることができます。
贈与契約書は既定の書式はなく、自分で作成できます。
「誰が誰から何の贈与をいつどのように受けるのか」ということを記載します。
贈与額の証明として銀行振り込みが適しています。
110万円をこえた税全贈与は贈与税の申告が必要です。
期限以内に申告しなければ税務調査の対象となり、本税に加えて追徴税が課せられる可能性があります。
定期贈与に該当すると課税
生前贈与は予期せぬ課税もあります。
たとえば、毎年正月に子供に現金手渡しで生前贈与をしていると、税務署に定期贈与と判定される恐れがあります。
そうなると非課税枠が使えなくなります。
定期贈与とは、事前に取り決めをして分割で財産を贈与する方法です。
たとえば、1000万円を毎年100万円ずつ分けて渡すなど。
定期贈与は毎年110万円以下でも例外として贈与税がかかります。
初年度に1000万円の贈与が実質的に発生したとみなすためです。
3年前の生前贈与は課税(7年)
生前贈与は110万円以下なら非課税ですが、過去に遡って相続税の課税対象(生前贈与加算)となります。
現在は、死亡3年前の生前贈与は相続税の課税対象です。
なので、生前贈与をするならなるべく早めにしておきます。
同性カップルの相続は遺言書だけじゃない!のまとめ
LGBTの相続方法の一つとして、遺言書があれば財産を相続させることができます。
しかし、遺言書を書いても全財産を同性パートナーに相続させることができるわけではありません。
相続で同性パートナーの親族とトラブルになることもあります。
遺言書や生前贈与などの対策をしなければ、一円も同性パートナーに相続させることができないので何かしらの手続きはしておきましょう。