戸籍を改名したつもりがないのに、勝手に戸籍の氏や名前の漢字が変わっていたらびっくりしますよね。
戸籍の文字には誤字・俗字・正字とあり、同じ正字でも旧字体や新字体などいろんな漢字の種類があります。
普段使っている名前と戸籍に登録されている漢字が違うのは役所のミスもありますが、漢字の種類によっても変更されてしまうケースがあるのです。
こういった戸籍の漢字の間違いは、役所や家庭裁判所で手続きすれば、戸籍を訂正することができます。
人によって、戸籍の氏(苗字)や名前を正字の新字体に変更したけど、過去に使っていた旧字体や俗字に戻したいという方もいると思います。
戸籍の登録間違いを訂正したい、旧字体や俗字の漢字に戻したいという方に向けて、戸籍の登録間違いによる訂正の手続き方法を解説します。
戸籍の漢字「誤字・俗字・正字」とは?
戸籍の漢字の訂正は、漢字の種類によって手続き方法が変わります。
戸籍に漢字の種類は誤字・俗字・正字(旧字体や新字体)があります。
戸籍を誤字から正字に訂正したいのか、正字に訂正するにしても旧字体なのか新字体なのかで変わります。
まずはどんな漢字があなたの戸籍に登録されているのか、訂正したい漢字がどの種類なのか確認しましょう。
戸籍の漢字の誤字とは?
誤字とは正字にも誤字にも属さない字で、辞書にない本来の正しい字ではない文字です。
日本の戸籍制度は明治5年から始まり、当初は手書きで作成していました。
戸籍の文字に関する特定の規定もなかったため、届出人が間違った漢字を記載してそのまま登録されたり、担当者の記載ミスなどによって誤字が発生しました。
手書きだと書いた人の癖もあるので、それによって辞書にはない文字として誤字が生まれたようですね。
戸籍の漢字の俗字とは?
俗字とはもともとは誤字の一つです。
習慣により長く使われるようになり、一般的に通用している文字を俗字といいます。
辞書に俗字として記載されている漢字もあります。
髙・﨑・嶌・國・櫻・凛・嶋
戸籍の漢字の正字とは?
正字とは常用漢字で、学校で習う通用自体があります。
康煕辞典(こうぎじてん)や漢和辞典で正しいとされる文字です。
旧字体と新字体とは?
旧字体も新字体も正字に含まれます。
新字体は旧字体を簡略化した漢字で、当用漢字表に採用された字体です。
旧字体は古くから使われている漢字で、現在使われている当用漢字表で採用される前に使用されていた字体です。
旧字体:澤・廣・邊・邉・斉・齋・濱・惠・眞・國・奧
新字体:沢・広・辺・齊・斎・浜・恵・真・国・奥
[常用漢字一覧[新旧字体]|常用漢字情報サイト]で新字体や旧字体を調べることができます。
誤字や俗字など戸籍の間違いが起こる理由
普段使っている名前の漢字は旧字体なのになぜか戸籍が新字体で登録されている、俗字から正字に変更されている、といった戸籍の間違いはなぜ起こるのでしょう。
考えられる原因は2つあります。
- 役所の担当者の漢字登録間違い
- 戸籍の漢字の扱いが変更された
一つ目は役所の担当者による戸籍の登録間違いです。
戸籍の移記(新戸籍の編成)や電子データ化する際に、登録ミスで誤字になったり、旧字体から新字体などに登録されてしまうなどがあります。
単純に担当者が登録ミスした場合もあれば、そうでない場合もあります。
届出人が漢字を間違えていて、訂正されることなく間違った漢字のまま役所が受理して、結果的に間違った漢字で登録されてしまったという場合もあります。
二つ目の戸籍の漢字の取り扱いですが、戸籍の電子データ化に伴って訂正されてしまうケースです。
これは旧字体や新字体ではなく、誤字や俗字の漢字が該当します。
旧字体もですが誤字や俗字は電子データで戸籍を管理する上で、コンピューターに登録されていない漢字もあります。
それを解消するために出された法務省の通達によって、誤字や俗字の戸籍の文字が役所の職権で訂正されているのです。
「通達による戸籍の文字の扱いの違い」
届出がない限り誤字・俗字はそのまま記載する扱い
例:昭和26年に結婚すると「斎藤(俗字)」のまま戸籍に登録される
戸籍の変動で誤字・俗字は正字に変更される扱い
例:平成4年に結婚すると「斎藤(俗字)→斉藤(正字)」で戸籍に登録される
戸籍の変動で誤字は正字に変更され俗字はそのまま記載される扱い
平成7年に結婚すると「斎藤(俗字)」で戸籍に登録される
このように法務省の通達によって年代で戸籍の文字の扱いが異なり、通達に沿って戸籍の変動(結婚・転籍・養子縁組など)で、役所の職権で俗字や誤字が正字に訂正されることがあります。
職権で訂正される場合は原則として役所から事前に告知がありますが、役所から告知なく勝手に戸籍が訂正されているケースもあるようです。
また、戸籍に登録される漢字は、結婚や転籍などの戸籍の変動の届出に記述した漢字が登録されます。
現在、使用している名前が旧字体や俗字でも、過去の届出の際に正字を記述した場合は、役所から事前告知なしで自動的に正字で戸籍に登録されてしまいます。
自分が知らない間に勝手に戸籍の漢字が変更されている(間違いがある)場合は、気付かぬうちに届出に正字を書いていたり、親族が役所から正字への訂正の告知があった際に許可した可能性があります。
戸籍の漢字「誤字・俗字」を正字に訂正する方法
戸籍の誤字や俗字をいつも使っている正字に訂正したいという場合は、役所で簡単に手続きができます。
これは戸籍に漢字の間違いがなくて、旧字体から新字体に変更したい、俗字や誤字を正字に変更したい場合も可能です。
役所で戸籍の訂正・変更ができるケース
戸籍の登録間違いで誤字や俗字を正字へ訂正する場合は、役所だけで手続きができます。
戸籍の訂正でよくある漢字の例は「邊→辺」「澤→沢」名前は「眞→真」「惠→恵」などがあります。
また、明らかに役所のミスで戸籍の漢字の間違いが起こっている、同意していないのに勝手に誤字や俗字から正字に変更されていて訂正したい、旧字体になっている、という場合も役所で変更できます。
誤字や旧字体など漢字の種類に関係なく、戸籍の間違いが役所側に責任があれば、役所だけで訂正の手続きができます。
- 戸籍の誤字を正字に変更したい
- 戸籍の俗字を正字に変更したい
- 戸籍の旧字体を新字体に変更したい
- 戸籍の漢字を勝手に変更されていた
(役所のミスが明らかであること)
名前の読み方だけの場合も役所の手続きだけで済みます。
訂正に必要な手続き方法と必要な書類
- 手続き場所
・本籍地の役所か住居地の役所 - 届出人
・戸籍の氏の変更は筆頭者・配偶者
(筆頭者や配偶者がいない場合は全員の署名)
・戸籍の名前の変更は本人、15歳未満は親権者 - 必要書類
・申出書(役所に備え付け)
・印鑑
・戸籍謄本
(本籍地で手続きする場合は不要)
戸籍申出書(クリックで拡大)
>>戸籍の文字が誤字または俗字のとき-鹿嶋市
申出書を提出すると、後日名前変更したという書類が送付されます。
戸籍の氏名が旧字体で新字体に訂正する時は「戸籍更正」、俗字や誤字を正字に訂正する時は「戸籍訂正」です。
戸籍の漢字「正字」を誤字や俗字に訂正する方法
戸籍を正字から誤字や俗字に訂正したい場合は、役所ではなく家庭裁判所での手続きが必要です。
家庭裁判所で戸籍の訂正・変更が必要になるケース
家庭裁判所では戸籍の漢字の訂正と変更の手続きがあり、状況によって手続き内容が変わります。
普段使っている漢字と戸籍に登録されている漢字が異なる場合は、基本的に訂正の手続きです。
戸籍の漢字の登録間違いが役所のミスの可能性があっても、その証明が難しい場合は変更の手続きになる可能性が高いです。
戸籍の間違いが起こった過程によって訂正か変更の手続きになるので、どちらになるのかは家庭裁判所へ問い合わせるのが確実です。
仮にあなたが戸籍の訂正の申立てをして、申立て後に家庭裁判所から「変更の手続きにしたほうがいいよ」と言われたら、それに従えば問題ありません。
訂正も変更(氏の変更)も手続き自体に違いはなく、戸籍に履歴が残るか残らないかの違いです。
手続き上、戸籍の変更は全く違う名前に変更する名の変更(改名)や氏の変更(改姓)と同じ扱いなので、戸籍に「変更した」という記録が記載されます。
- 新字体や正字から俗字や旧字体へ変更したい
(元々の戸籍の名前が俗字でも旧字体でもない) - 別の字への変更
(山田→田中) - 前まで使っていた旧字体や俗字に戻したい
- 戸籍の登録間違いが役所のミスなのか届出人のミスなのか不明確な場合
戸籍の登録間違いが役所のミスではなかったり、正字以外の漢字(誤字・俗字)へ訂正・変更したい場合は家庭裁判所での手続きが必要です。
また、正字への訂正や変更は基本的に役所で手続きが完了しますが、同じ正字でも旧字体への変更は別です。
「澤村→沢村」のような正字への変更は役所で訂正の手続きが可能ですが、「沢村→澤村」と旧字体(正字)への変更は家庭裁判所の許可が必要です。
他にも変更や訂正したい漢字が正字でも、別の字への変更は訂正の手続きはできません。
「廣→広」は旧字体か新字体かの違いで字は同じですが、「斎→斉」は同じ読み方(さいとう)でも字が異なるので改姓(氏の変更)の手続きとなります。
戸籍の訂正・変更の条件
戸籍の名前や苗字の漢字変更は、条件を満たせば希望の漢字へ変更することができます。
条件は氏の変更なら「やむをえない事由」、名前の変更なら「正当な事由」です。
やむを得ない事由によって氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届けなければならない。
戸籍法第107条(氏の変更)
正当な事由によって名を変更しようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届けなければならない。
戸籍法第107条の2(名の変更)
一般的に「個人の感情」は許可されず、「社会生活で甚だしい支障が出ている場合」に許可されます。
私は過去に戸籍の名前を改名しているのですが、許可するかどうかの判断は各家庭裁判所の裁量が大きく影響するので簡単ではありません。
しかし、別の名前に変更する通常の改名や改姓とは違い、戸籍の訂正や変更を理由にし場合は比較的許可される傾向です。
許可されるためには、事情の証明が重要なので、証拠資料を用意することで許可されやすくなります。
「なぜ戸籍の漢字間違いが生じたのかがわかる資料」
「戸籍の訂正や変更が必要となる事情の証明資料」
戸籍の漢字の変更や訂正は、必要書類と証拠となる資料を用意して申立てましょう。
家庭裁判所での手続き方法と必要書類
- 手続き場所
・住所を管轄する家庭裁判所 - 申立人
本人(15歳未満は親族などの代理人) - 必要書類
・氏の場合は氏の変更許可申立書、名前の場合は名の変更許可申立書
・申立人の戸籍謄本
・氏や名前の変更理由を証明する資料 - 費用
・収入印紙800円
・返信用郵便切手82円×5
(家庭裁判所によって切手費用が異なるので確認しましょう)
手続きの流れ
- 家庭裁判所へ氏や名前の変更を申立てる
(必要書類を郵送もしくは持参する) - 書面照会・面談
(家庭裁判所と書面でのやり取り・申立て内容の聞き取り) - 審判
(結果) - 役所で戸籍の変更手続き
家庭裁判所での戸籍の訂正や変更の申立ては、申立てから審判まで約3週間~1ヵ月程度かかります。
長いと許可されるまで1ヵ月以上の期間がかかります。
どちらかというと、戸籍の氏の変更の方が名前の変更よりも時間がかかる印象です。
申立て後の書面照会や面談は実施されない場合もありますが、あるものだと思っておいたほうがいいでしょう。
戸籍を改名した私の場合は、書面照会がなく面談のみ実施されました。
戸籍を訂正したい漢字の種類によって難易度が変わる
家庭裁判所では漢字の訂正と変更の手続きが可能ですが、訂正も変更も許可の難易度に大差はありません。
ただ、戸籍の漢字を誤字・俗字・正字(旧字体や新字体)のどの漢字に訂正(変更)するのかで難易度が変わります。
前述したように、役所で手続きできる場合は簡単ですが、戸籍の漢字を「正字から誤字や俗字へ変更」「新字体から旧字体へ変更」する場合は、家庭裁判所で手続きと許可が必要です。
許可が必要になる分、どうしてもハードルが高くなります。
また、現在は新字体(正字)を使用していて、過去に使用していた旧字体や誤字に戻したい、という場合も難しくなります。
さらに誤字への変更は基本的に却下されます。
誤字は正字とは違い人名漢字に含まれていないため、誤字への変更はできません。
どうしても戸籍の名前を旧字体・誤字・俗字の漢字に変更したい場合は、より精密な証拠資料や、状況によって許可されるまで長期的な期間が必要になることもあります。
「誤字・俗字・正字」戸籍の漢字を訂正する方法のまとめ
誤字や俗字など漢字の種類によって、改名した覚えがないのに戸籍の漢字が変わっていることがあります。
間違いで登録されているケースもあれば、法務局の通達の影響などいろんな要因があります。
役所のミスで俗字や旧字体に訂正したいという場合は、役所でスムーズに訂正ができます。
俗字や誤字で戸籍に登録されている文字を、正字に訂正したいという場合もかなり簡単です。
しかし、正字から俗字に変えたい、旧字体に戻したい、戸籍の登録間違いの経緯が不明(役所のミスと断定できない)といった場合は、家庭裁判所の許可が必要なので少し難しくなります。
戸籍の間違いの訂正は、どのような過程で間違った漢字が登録されてしまったのか、しっかり証拠を揃えて状況を説明できる状態であれば、家庭裁判所は許可します。
しっかり申立ての準備をしましょう。