戸籍制度は日本だけでなく、海外にもあると思っている方もいると思います。
海外でも戸籍制度がある国はありますが、実はかなり少ないです。
ここでは日本の戸籍制度と海外の戸籍制度の違いや、戸籍制度がない海外の仕組みについてご紹介します!
日本の戸籍制度とは?
日本の戸籍は「生まれてから死ぬまでの身分関係の証明」です。
そして、戸籍は日本国籍がある人のみ作られ、海外に住んでいても国籍が日本であれば戸籍があります。
戸籍には、自分がどこで生まれたのか、親は誰なのか、認知、養子縁組、婚姻、離婚などすべての身分関係が記録されています。
日本では出生届が出されると子供は親の戸籍に入り、「夫婦と子供」「未婚の親と子供」の2世代までの家族単位で戸籍が編製されます。
孫、甥、兄弟姉妹、叔父などの三世代以上の親族が一つの戸籍に在籍することはできません。
戸籍を辿って調べれば、その人の個人情報を見ることができます。
そのため、戸籍制度はいらないという意見もあります。
普段の生活で戸籍を提出する機会はほとんどありませんが、出生地による差別や、相続で必要なすべての家族の戸籍の収集が困難になる、など問題点も指摘されています。
戸籍制度があるので苗字も夫婦別姓にできないため、それを理由に入籍しないという方もいますよね。
海外で戸籍制度を導入している国
いろんな意見がある日本の戸籍制度ですが、この戸籍制度を導入している国は日本だけでなく海外の国でもあります。
しかし、戸籍制度を導入している国は非常に少なく、海外で戸籍制度があるのは、台湾・中国の2つの国のみです。
海外では戸籍制度は主流ではないんですよね。
2007年までは韓国でも日本のような戸籍制度が用いられていたのですが、2008年の元日に戸籍制度が廃止されています。
ここでは日本のように海外で戸籍制度を導入している国として、中国と台湾の戸籍制度をご紹介します。
戸籍制度と言っても、海外と日本とでは戸籍制度の中身は異なります。
中国の戸籍制度とは?
日本では戸籍は戸籍ですが、中国では戸籍を「戸口」といい、農村戸口と都市戸口の2種類の戸籍に分けられています。
このうち農村戸口が6割、都市戸口が4割となっており、中国での戸籍制度は都市住民の食糧供給を安定させ、社会保障の充実を目的とされています。
そのため農村から都市への移動は制限され、自由に引越しすることもできません。
また日本の戸籍の扱いは全国民で違いはありませんが、日本とは違い、中国の戸籍はどの種類になるのか(農村と都市)で扱いに差が生じます。
医療・保険・就職に関しても、都市戸口の方がより良い条件で受けることができます。
こうした韓国の戸籍制度の性質上、都市戸口者は豊かな生活を送ることができますが、農村戸口者の場合はどうしても貧困生活となってしまいがち。
戸籍によって、深刻な格差問題が生まれています。
このようなことが問題となり、近年では農村戸口者でも都市戸口を取得できるように、戸籍に関して社会的な動きも活性化しています。
また、地方都市においても次々と戸口に関する制限が取り払われてきています。
しかし、それでもどの都市に戸口があるのかで受けられる公共サービスに違いがあるなど、中国での戸籍制度による格差問題はまだ根強く残っているのが現状です。
台湾の戸籍制度
日本の戸籍制度では、戸籍の取得は本籍地にある市区町村役場でしか行うことはできませんが、台湾では全国的にコンピューターによって管理されています。
そのため、どこにいたとしても戸籍の取得を行うことができます。
台湾の歴史を見ると中国本土出身者である外省人を優遇している時代もあったのですが、故李登輝政権時代に廃止されています。
現在の台湾での戸籍制度は、個人単位の身分登録制度になりつつあります。
また、台湾では14歳になると国民身分証が交付され、これを常時身に付けておく義務が発生します。
国民身分証には国民識別番号が一人ひとりに振られており、一般的には戸籍よりもこの番号がよく利用されています。
戸籍制度がない海外では番号で管理
日本では戸籍制度によって国民を管理していますが、戸籍制度を導入していない海外ではどのようにして管理しているのでしょう。
日本のように戸籍制度がない海外では、国民一人ひとりに付与されている個別番号で個人単位で管理されており、国によって利用目的や機能は異なります。
日本で2016年から導入された、マイナンバーと同じような感じですね。
韓国での戸籍制度
前述しましたが、韓国は戸籍制度を導入していた海外の国の一つですが、個人の尊厳と男女平等の原則に反するとの声が多く、2007年に戸籍制度が廃止されました。
戸籍制度の代わりとなる新しくなった身分登録制度は、個人単位で家族関係登録簿が作成されるようになりました。
本籍もなくなり、「登録基準地」という名前に変更されています。
身分登録制度では本人・直系尊属・直系卑属・配偶者・兄弟姉妹のみが発行でき、第三者が発行する場合には、委任を受けてからでないと発行することができません。
日本の戸籍(謄本や抄本)も第三者が発行する際には委任状が必要になることから、似ている部分も感じられますね。
イギリスでの制度
イギリスでは日本の戸籍のように国が家族単位で身分登録することはなく、個人登録に近い形で社会保障番号や住民登録で管理されています。
また、10年に一度、西暦の1の位が1になる年には国勢調査が行われています。
この国勢調査では国勢調査の期間中にイギリス国内にいる人全員が対象となり、留学生や短期滞在者もまた例外ではありません。
出生地や居住地、また人種や英語が話せるかなどさまざまな質問項目があり、それらすべてに回答しなければなりません。
国勢調査期間中にイギリスにいたにも関わらず、回答を行わない場合には罰金が生じます。
この国勢調査の記録は100年間、保管されたのちに見ることができるようになります。
アメリカでの制度
アメリカでも家族関係のすべてが記載される戸籍ではなく、個人だけの情報が記載される社会保険番号が利用されています。
先ほど解説したイギリスでは最終的に1つの身分登録機関に全ての情報が集まるのですが、アメリカでは全てを統括する身分登録機関はなく、州や郡ごとに管理されています。
社会保険番号の目的は社会保障や納税のための番号なので、アメリカ国民だけでなく、永住者や外国人就労者また留学生にも発行されます。
自分の身分を証明する公的な効果があります。
スウェーデンの制度
スウェーデンでは長い間、出生や死亡また婚姻に関する情報は教会が管理していました。
1947年に住民登録番号と呼ばれる個人登録制度を導入し、全国民に付与しています。
個人登録制度を導入した後も、その管理自体は教会が行っています。
住民登録番号には氏名や住所また本籍地だけでなく、所得や資産などの情報も含まれます。
海外で戸籍のような帳簿で管理している国もある
日本のように戸籍制度はなくても、海外では戸籍のような帳簿として管理している国もあります。
ドイツは家族簿で管理
ドイツには戸籍制度ではないのですが、日本の戸籍制度と同様に家族単位で身分登録を行う「家族簿」が導入されています。
もともとはナチス時代にユダヤ人を排除するために用いられていた家族簿ですが、現代ではそのような目的はなく、身分登録を行う方法として利用されています。
日本の戸籍制度では筆頭者が設けられていますが、ドイツの家族簿にはそのような項目はなく夫婦が書類上では平等な形で記載されています。
家族簿には出生や死亡また婚姻の他にも学位や職業なども記載され、日本の戸籍制度と比べると多くの個人情報が国に登録されることになります。
世界的に日本の戸籍の情報量は少なくなっています。
フランスは市民籍で管理
フランスでは国民一人ひとりに市民籍が付与されます。
市民籍は役所に出生届を提出した際に作成され、生まれた場所や日時また両親の名前が記載されます。
市民籍は作成された場所から移すことができず、閲覧するには足を運ぶ必要があったのですが、インターネットが普及したこともあり、ネット上から取り寄せることが可能になっています。
ちなみに日本の戸籍は本籍地のある役所か郵送、コンビニでの発行が可能です。
またフランスでは16歳になると身分証明書が発行され、それによってもフランス国民であることの公的証明を行うことができます。
海外と日本の戸籍制度に関するまとめ
日本には戸籍制度がありますが、海外でも戸籍制度のある国があります。
戸籍制度といっても、日本と海外とでは制度の中身が少し異なっており、多くの海外では戸籍制度がないのが主流です。
日本では家族単位で戸籍によって管理されていますが、欧米などの海外では個人主義なので、戸籍制度の有無はそのあたりの考え方の違いもあるでしょうね。