戸籍制度は日本人ならば誰もが一度は耳にしたことがあるかと思います。
戸籍制度は、あなたが生まれてから亡くなるまでの家族関係を証明する重要な公文書。
婚姻に関する手続きや国家資格を取得した際にも必要になる重要な制度ですが、21世紀になって戸籍制度をメインに導入しているのは日本だけになりました。
日本でも一部の政治家が戸籍制度の廃止を訴えたことで大きな波紋を広げましたが、戸籍制度を廃止するとどのようなデメリットがあるのでしょうか。
この記事では戸籍制度を廃止するデメリットや廃止を反対する声をまとめています。
戸籍制度の廃止は乗っ取りの危険性が!?
戸籍制度を廃止する大きなデメリットとしては、さまざまなリスクがあるということです。
怖いと感じるのが戸籍の乗っ取りです。
戸籍の乗っ取りは隠語(警察用語)で「背乗り(はいのり)」と言います。
あまり情報がないのですが、東日本大震災などのような非常時に亡くなったはずの方の戸籍で転入・転出の手続きが行われていたという事件があったようです。
また他国で亡くなった日本人の国籍を乗っ取るという話も・・
日本でのなりすましだと、住民票を悪用したケースがいくつもあります。
悪意のある犯罪者や不法滞在者などにとって、戸籍は喉から手が出るほど欲しいもの。
他人の戸籍を入手することができれば、戸籍の所有者になりすまして借金をしてそれを持ち逃げしたり、過去の犯罪行為の抹消までもが可能になってしまいます。
仮に戸籍制度が廃止されれば、そのあたりはちゃんと対策されるでしょうけど、戸籍制度で国民をしっかりと管理していれば、不正に戸籍を利用した犯罪者を特定することができます。
そういったことから、戸籍制度を廃止してしまうと日本で悪事を働く外国人や犯罪者を捕まえることが難しくなるというデメリットが挙げられます。
戸籍制度を廃止するデメリット
戸籍の乗っ取りだけでなく、戸籍制度の廃止でおこるデメリットは他にもあります。
先祖代々の歴史がわからない
戸籍の乗っ取りと同じくらい懸念されていることです。
戸籍制度が廃止されると、先祖や親族との繋がりや出自をさかのぼって調べることができなくなってしまうというデメリットがあります。
先祖を辿って家系図を作ったり、純粋に先祖の歴史を知ることができるというのは感動がありますよね。
戸籍制度の仕組みから、正確にそういった目的を果たすことができます。
マイナンバーカードがあれば、面倒な事務手続きが減るので個人の管理がとても楽になるはずです。
世界的には個人単位が主流ですが、出生登録がなされても一元管理されるわけではありません。
国によりますが、個人単位は婚姻しても死亡しても別個に保管されるため、出生登録を見ても婚姻や生存の有無がわからない状態になります。
戸籍制度を廃止することで、日本人が長年大切にしてきた伝統や親族との関係性がどんどん薄れてしまうかもしれません。
「どこの誰だかわからない」なんて状態になってしまわないか不安視されます。
日本の正確な人口が把握できなくなる
戸籍制度は、現在日本で暮らしている日本人の数を正確に把握するためにも活用されています。
グローバル化が進んだことで、海外から日本に移住される外国人の数がとても増えました。
日本に住んでいる外国人と日本人をはっきりと区別してカウントするためには、戸籍制度が必要不可欠です。
戸籍制度が廃止になってしまえば、単純に日本に住んでいる総人口しか把握できません。
日本人のみに統計を行ったり、日本人だけの人口を把握することができなくなるデメリットがあるようです。
不法滞在者が増えてしまう
日本は戸籍制度によって国民をしっかりと把握しているので、海外から不法に入国・滞在している外国人がいれば、簡単かつ迅速に見つけ出すことができます。
これは裏を返せば、戸籍制度を廃止することによって不法滞在者を見つけ出すことが困難になるということです。
不法滞在者がすべて悪人だという訳ではありませんが、少なからずマナーや文化の違いによるトラブルの件数は増加してしまうかもしれません。
戸籍制度廃止に反対している人の声
戸籍制度の廃止はデメリットが大きいと考え、反対する意見も多いです。
戸籍制度の廃止に反対している方の意見をまとめると、
- 先祖の歴史や日本の古き良き文化や伝統を失ってしまう気がする
- 犯罪が増えるのではないか
- 相続や資格取得時に個人を簡単に証明できるから
調べた戸籍制度の廃止のデメリットの内容と、反対の声の内容はあまり大差がないですね。
戸籍制度さえあれば自分だけではなく家族や親族、さらには江戸時代やそれ以前の先祖までさかのぼって調べることができます。
相続や自分のルーツを知るために戸籍を調べたら、実は兄弟や姉妹がいたなんてことは決して珍しくありません。
戸籍制度は、近親婚や重婚を防ぐという意味でも優れた制度ですね。
役場で手続きをするときに手間がかかりますが、戸籍制度があることで日本の歴史的な価値を保存することができるという大きなメリットがあります。
このように戸籍制度廃止の反対を訴える方の意見を聞いていると、戸籍制度に対するいろいろな思いや考えを知ることができますね。
戸籍制度の廃止に賛成する理由
反対に戸籍制度の廃止に賛成の方の意見として、
- 出自による差別
- 手続きの効率化
これらの理由があります。
出自による差別
戸籍は出自がわかるので差別の温床だという指摘があります。
たとえば同和問題で生まれた場所による差別などがあります。
今の時代、出身地だけで差別する人はどれくらいいるのか疑問です。
人によって戸籍が差別に繋がるという意識はあまりないかもしれません。
差別というより何らかの理由で出自を隠したいという風にも受け取れるのですが気にしすぎでしょうか。
手続きの簡素化
戸籍制度廃止について賛成している人の中には、マイナンバーカードで個人を記録すれば戸籍制度は必要ないという意見をお持ちの方がたくさんいます。
マイナンバーは、家族単位ではなく個人単位で管理されます。
マイナンバーで一元管理すれば事務的に簡素化できますね。
すでに戸籍をコンビニで発行できたりするので、事務手続きが楽になるのは魅力的だったりします。
夫婦別姓は戸籍制度廃止の布石
日本では25年ぶりに夫婦別姓の議論が始まりました。
最高裁では夫婦別姓は合憲との判決で申し立てを棄却するという決定を出しています。
夫婦別姓が認められると戸籍制度の廃止に繋がるかもしれません。
実際に夫婦別姓の主張をしている方が戸籍制度の廃止を訴えていたりします。
戸籍制度の廃止を訴える人の背景には何があるのかといったことは、しっかり調べたほうがよさそうです。
戸籍制度を廃止せず戸籍にある欄に別姓を記載するという案も出ていますが、夫婦別姓は戸籍制度の廃止の布石になるんじゃないかと感じます。
選択的夫婦別姓だけでなく同性婚のような家族像が多様化している時代に、戸籍制度が足かせになっている部分もあるでしょう。
日本のように戸籍制度がある国は世界的に珍しく、廃止すればメリットもデメリットもあります。
廃止の議論はそもそも戸籍制度とは何かという歴史も理解した上でよく考えるべきでしょう。
日本の戸籍制度を廃止するデメリットのまとめ
戸籍制度とは、あなたが日本人として生まれてから亡くなるまでの家族関係を証明するためのものです。
あなたの家族構成や親族関係や婚姻状況だけではなく、あなたが何者であるのかを証明できるとても重要な制度です。
戸籍制度を廃止することにはたくさんのデメリットがあり、それに伴って大きなリスクを背負ってしまう可能性があります。
「どこの誰だかわからない」なんて状態になると大変ですからね。
他の国では戸籍制度を廃止しているのに日本だけ導入しているのはおかしい、と考えてしまう気持ちもわかります。
戸籍制度に関しては、日本がなぜ戸籍制度を続けているのか、理解を深めたうえで議論するべきでしょう。