天皇や皇族はニュースなどでも「◯◯さま」と報道され、田中や佐藤などの苗字で呼ばれているところを聞いたことがないですよね。
一方で昭仁さま、美智子さま、徳仁さま、雅子さま、愛子さまなどこのような呼び方はよく耳にします。
なぜ天皇や皇族は苗(姓)で呼ばれないのでしょう。
実は天皇や皇族には苗字(姓)はなく、戸籍もありません。
この記事では天皇や皇族に戸籍や苗字がない理由について解説します。
また、戸籍がないとなると、運転免許証やパスポートはどうなっているのか気になりますよね。
運転免許証やパスポートの有無だけでなく、天皇や皇族の結婚、戸籍がない場合にどうなるのかなど、あらゆる疑問についても調べてみました!
天皇や皇族に戸籍や苗字はない
天皇や皇族に戸籍や苗字は存在しません。
戸籍がないので、当然ながら住民票もありません。
天皇や皇族には戸籍がないため、法律上や憲法上は日本国民ではないとか無国籍論がありますが、戸籍や苗字がない代わりに皇統譜および称号・宮号があります。
これがあるので、天皇や皇族は身分関係(家族関係)を証明することができます。
では、皇統譜や称号・宮号とはどのようなものなのでしょうか。
天皇や皇族の戸籍は皇統譜
天皇や皇族には戸籍がなく、戸籍に値するのが皇統譜です。
皇統譜とは天皇や皇族の身分に関する事項が記載されている帳簿のことです。
皇統譜は大統譜と皇族譜の2つから構成されており、大統譜は天皇と天皇の正妻である皇后に関する事項が記載され、皇族譜はその他の皇族に関する事項が記載されています。
また皇統は皇位継承が代々なされてきた系統のことで、皇統譜はそれらを証明する帳簿となります。
皇統譜には我々の戸籍と同様に原本と謄本があります。
原本は日本の行政機関の一つである皇室関係及び天皇の接受に関する事務を担当する内閣府の機関「宮内庁」に保管されます。
そして、そのコピーである標本は同じく日本の行政機関の一つで法の整備や法秩序の維持を担当する「法務省」に納められてます。
皇統譜は2001年4月1日に施行された行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)に基づいて、宮内庁に申請すれば誰でも見ることができます。
苗字ではなく、御称号や宮号がある
天皇や皇族に苗字は存在しませんが、その代わりに御称号・宮号と呼ばれるものがあります。
御称号とは天皇陛下と皇太子陛下の子女にあたる「親王」「内親王」が生まれた時に与えられ、「◯◯宮」とすることが慣例となっています。
例えば皇太子殿下の幼少期は「浩宮」、皇太子殿下の弟宮が「礼宮」、妹宮が「紀宮」と呼ばれていました。
御称号は皇太子という地位に就くときに使われなくなります。
- 明治天皇 祐宮 睦仁
- 大正天皇 明宮 嘉仁
- 昭和天皇 迪宮 裕仁
- 明仁天皇 継宮 明仁
- 今上天皇 浩宮 徳仁
一方で、皇族の男が結婚し独立した際に天皇から与えられるものが宮号です。
宮号も御称号と同様に「◯◯宮」と与えられますが、その意味は御称号とは全く異なります。
また宮号を有するものの妻は「◯◯宮妃」と呼ばれます。
現在存在する宮号は以下のとおりです。
- 三笠宮
- 常陸宮
- 高円宮
- 秋篠宮
なぜ天皇や皇族に戸籍や苗字がないのか
ここまで天皇や皇族に戸籍や苗字が存在しないことについて解説しましたが、それではなぜ天皇や皇族には戸籍や苗字が存在しないのでしょうか。
これには主に2つの理由があると言われています。
天皇が苗字を与える側だったから
昔の日本では苗字や姓というものは、天皇が一部の権力者や特権階級に与えるものでした
このように天皇が苗字や姓をを与える側だったため、自身は持っていなかったと言われています。
また天皇は全ての権力者の中で最も位が高く、その天皇に苗字や姓を与える存在がいなかったことも要因と言えるでしょう。
そもそも苗字が必要がなかったから
天皇は一つの家系が代々受け継がれてきた「万世一系」と呼ばれる、永久に一つの系統が続く形態となっているため、そもそも苗字や姓で区別をする必要がなかったことも要因として挙げられます。
例えば我々のような国民は同じ名前が存在していた場合は田中や佐藤といった苗字や姓で区別をする必要がありますが、天皇や皇族は〇〇さまと言えばその人しか存在しないので、区別をする必要がないということです。
天皇や皇族は戸籍がなくても結婚できる
一般的に戸籍がない無戸籍の方は婚姻届を提出しても受理されないのですが、天皇や皇族は戸籍がなくても問題ありません。
しかし、我々国民のように婚姻届を提出したらすぐに結婚ができるという単純なものではないようです。
男性皇族が結婚する場合には皇室会議にかけられ、そこで承認を得る必要があります。
また、女性皇族が結婚する場合には皇室会議での承認は必要ありませんが、皇室典範(天皇・皇族について規定した皇室に関する法律)12条によって婚姻で皇室を出ると皇族から離れることになります。
たとえ離婚したとしても、皇族に戻ることはできないとされています。
皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる。
皇室典範12条
そして、一般的には離婚すると旧姓に戻ることになりますが、天皇や皇族には苗字がないので離婚前の苗字を使用することになります。
ちなみに、婚姻で皇室に入る一般人はそれまでの戸籍を失うことになります。
天皇や皇族の戸籍に関するよくある疑問を解決
我々一般人で戸籍を持っていない場合は、パスポートや運転免許証が発行できないなど様々な問題が発生します。
天皇や皇族が戸籍を持っていないということは我々一般人と同じように問題を抱えているのでしょうか。
天皇や貴族に戸籍がないことで生じる様々な疑問について見てみましょう。
戸籍がなくてもパスポートは発行できる?
天皇であっても、戸籍がない場合にはパスポートを発行することはできません。
しかし各国の代表者はパスポートなしで出入国が可能とされているため、天皇陛下またその正妻である皇后陛下はそもそもパスポートが必要ありません。
他の皇族の場合は、海外に行くたびにその都度1回限定のパスポートが発行されるみたいですね。
もちろん一般の出入国検査に並ぶことはなく、特別なカウンターから出入国が行われます。
戸籍がなくても運転免許証は取得できる?
一般的には戸籍がないと取得できないとされている運転免許証ですが、天皇や皇族の場合は皇居内で警視庁の担当者が実技・座学を行い試験を受けることができます。
その際、皇居内の道路に標識を立てて実技練習を行い、また路上教習も一般の教習所と同様に行われ、その際には皇居の周りの一般道を護衛車付きで練習をするそうです。
戸籍がなくても健康保険証は持ってる?
天皇や皇族であっても、戸籍がなければ健康保険証の発行はできません。
そのため医療費は全額自己負担となり、実際に天皇陛下が東大病院で心臓の冠動脈バイパス手術を受けられた際には全部で約450万ほどの金額を支払われたそうです。
しかし、天皇や皇族は宮内庁が管理・運営している宮内庁病院であれば無料で受診することができます。
宮内庁病院は皇居内にあるということもあり、誰でも受診できる病院ではありません。
天皇や皇族、宮内庁・皇宮警察本部の職員とその家族、さらに職員の紹介を受けた者のみが受診可能とされています。
天皇や皇族の戸籍と苗字に関するまとめ
天皇や皇族には戸籍や苗字というものがなく、それに代わる皇統譜・称号・宮号というものがあります。
戸籍がないので、パスポートや健康保険証は発行できませんが、その都度発行したり、宮内庁の病院があったりと配慮されているようですね。
天皇と戸籍や苗字について私自身も気になっていたことなので、調べてすっきりしました!